硬水と軟水の違い
硬水 軟水の違い
簡単に言えば、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンが比較的に多量に溶けている水を硬水(硬い水)、含有量の少ない水を軟水(軟らかい水)と言い、その程度は硬度という指標で表します
すなわち、硬度とはカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの量を、これに対応する炭酸カルシウム量(mg/l)に換算したものです。
(ドイツ硬度及びフランス硬度は換算の仕方が異なります)
そもそも硬水 軟水は「洗濯する時の石鹸の泡立ち」から来たもので、人間の生活に密着したものです。したがって、その決め方は人により、また、地域によって異なります。
科学大辞典及び理化学辞典によりますと、日本では、軟水 硬水は次の様に規定されています。
●178mg/l未満 | 軟水 |
●178mg/l以上 357mg/l未満 | 中間の水 |
●357mg/l以上 | 硬水 |
ちなみに、日本の地下水、鉱泉水では硬度が170mg/Lを超えるものは稀ですからほとんどが軟水と言ってもいいでしょう。
!! ワンポイントメモ |
【硬度の計算方式】 *簡便計算方式 *日・米の硬度 :炭酸カルシウム量に換算してmg/Lで表す 【用語の解説】 *総硬度 :水の中に溶けているCaイオンとMgイオンの量を表す指標である。 |
硬水 軟水の使い分け
●水は化学構造上、アルコールなどと同じように、ものの香りや味を引き出す力があります。それも、ミネラルの少ない軟水の方が抽出する力が強いのです。
ですから、珈琲、紅茶、緑茶やウィスキーなど、香りを大切にするものには、軟水を用いたほうが美味しくいただけます。
●ご飯なども、穀類のよい香りを引き出すために軟水が抜群です。
●お茶には人それぞれに苦味などのお好みがあり、軟水では、緑茶の渋み・苦味を楽しむことができ、硬水では、よりマイルドで飲みやすくなります。
●また、珈琲の場合も浅煎りのアメリカンでは軟水を用いることで、豆本来のよい香りとさっぱりした味を楽しむことができ、他方、深煎りのエスプレッソでは、硬水を用いますと、渋みの成分がカルシウムなどに結びついて、苦味、渋みが除かれてまろやかになり、コクが加わります。
●昆布や鰹のだしをとるにも軟水を使うとグルタミン酸イノシン酸などのうまみが抽出されやすい。
●肉料理の場合、抽出力の強い軟水では、いやな肉の臭みまで出てしまいます。そこで、硬水を使いますと肉のたんぱく質とカルシウムが結合して、硬たんぱく質(アク)として抜けて、いい味がでてきます。
ミネラルとは
ミネラル(Mineral)とは直訳すると鉱物質であり、その語源はMine、つまり鉱山からきています。
また、ある種の文献ではミネラルのことを生体金属元素と呼んでいます。
しかしミネラルにはフッ素(F)やよう素(I)などの非金属も含まれていますので、この表現では好ましくありません。そのためもっと範囲を広げて"生体微量元素"と呼ぶようになりました。
ちなみに『広辞苑』では"鉱物、無機物または栄養素として生理作用に必要な微量元素"と定義づけされています。
したがって、ミネラルとは本来の意味から少し範囲を広げて、生体に必要な微量元素、つまり生体微量元素と理解してください。
ところで、人の身体は元を正せばいろいろな元素の集合体です。
その中に生体微量元素もあれば酸素や炭素などの全体量の大変を占めるような多量元素もあります。
また、これほど存在量は多くはありませんが、人間の骨格を構成するカルシウム(Ca)やリン(P)は全体重の1~1.5%程度あります。
なお、先の多量元素には水素や窒素も含まれ、これらは水分とタンパク質、脂質、糖質などの有機物を構成しています。
また人間のからだの60%程度が水分であるところから、酸素や水素の存在量が多いのも理解できます。
人のからだの水分や有機物を合計すると全体量の96%程度になります。
したがって、残りの4%程度がミネラルに相当します。
また、この中でとくに多いミネラルがカルシウムとリンです。
そのほかは、全部まとめてもせいぜい全体重の1%以下です。
出典:【図解】ミネラルの話 谷腰 欣司著 日本実業出版社
マグネシウムも歯や骨格をつくる
マグネシウム(Mg)の体内存在率はおよそ0.14%、重さでみると体重60Kgの成人で80g程度になります。 ただし一説によるとこの値はもう少し低いとも言われています。 マグネシウムはカルシウム(Ca)と同様に、その70%が歯や骨にあり、カルシウムやリンと複塩を構成しています。 残りは軟組織や髄液、その他血球や筋肉の細胞内に分布しています。
なお、細胞が古くなると、それに対応してマグネシウムの含有量も減少することが知られています。 また、マグネシウムはカルシウムとカリウム(K)の正常代謝と、カルシウムを骨から取り出す作用にも必要となります。 つまり体液中のカルシウムが少なくなると、副甲状腺ホルモンが働いて、骨からカルシウムを取り出すメカニズムをスムーズに行うのに必要なものなのです。 この作用は、体内ではあらゆる部分でカルシウム(イオン)を必要とするため、そのカルシウム分を骨格から吸収しようとするためです。 したがってカルシウム不足が続くと歯や、骨がスカスカになってしまいます。 ところで、カルシウム分は生体内で5番目に多い少量元素だといわれていますが、 5番目にランクされているのは、このほかナトリウム、塩素などがあります。
*マグネシウムは70%が歯や骨に使われている
*マグネシウムは酵素の働きを助ける
マグネシウムの役割をまとめると、①歯や骨格の構成成分となる、②酵素の補因子(金属イオン)として使われたり、エネルギー代謝反応に関与する、③タンパク質合成への関与、 ④神経、筋の興奮性の正常化に関与・・・・などです。
マグネシウムが欠乏すると細胞や体液のカリウム、ナトリウム、カルシウム濃度の二次的変化が起こり、心機能に悪影響を及ぼします。また、筋肉のけいれん、情緒不安定などの症状が現れます。
なお、マグネシウムの摂取量は成人で一日約250mgといわれていますが、これを身近な食品でとるには、大豆や落花生をはじめニンジン、ホウレンソウ、その他、海藻類などを上手に組み合わせることです。
出典:【図解】ミネラルの話 谷腰 欣司著 日本実業出版社
水のpHは中性がよい
私たちが毎日飲む水には不純物や、いろいろなミネラル、細菌などが含まれています。
ここで、細菌といっても、サルモネラ菌や黄色ブドウ球菌などではなく、生理作用に必要なバクテリアのことです。
また水のよしあしを決める、ひとつの基準として水のpH(ペーハー)があります。
このpHは水素イオン濃度と呼ばれ、溶液中の水素イオンの濃度を表し、その程度を指数化したものです。
このためpHのことを水素イオン指数などと呼ぶ場合もあります。
ここで、pH1というのは酸の量がマイナス1乗、つまり強酸性のことです。
またpH7というのはマイナス7乗のことで、これは中性となります。
さらにこの指数が増えてマイナス14乗が強アルカリ性(pH14)となります。
なお水素イオンとは水素原子が1つ原子を失った一価の陽イオンのことでH+となります。
また水溶液中ではオキソニウムイオン(H?O+)として存在し水素イオン(H+)は水分子(H?O)と結合してこの形になっています。
ところで、水道局の規定によると、一般家庭に給水されている水のpHは5.8から8.6の範囲に定められていますが、人間の体液もほぼこの範囲に収まっています(但し胃液や尿を除く)。
このため飲料水は酸性にかたよってもアルカリ性にかたよってもよくないのです。
またミネラルなどの微量元素はpHが8~9になると最も減少する傾向がありますので、アルカリ性の水はあまり感心しません。
なお私たちの食生活を語る場合、あれは酸性食品だとか、これはアルカリ性食品だとか便宜上区別することがありますが、これは食品そのものの状態をいうわけでなく、対象となる食品を高温で加熱し、その後にできる灰分(ミネラル)を水に溶かして判定したものです。
このため、ダイコンやキューリなどの野菜類はpH6の弱酸性を示しますが、その灰分はアルカリ性を示します。したがって。アルカリ性食品に位置づけされています。
出典:【図解】ミネラルの話 谷腰 欣司著 日本実業出版社